お言葉

寬仁親王妃信子殿下

公益社団法人女性の健康とメノポーズ協会
名誉総裁


このたび「女性の健康週間」にあわせ、厚生労働省、一般社団法人日本女性医学学会ほか各学会の後援を賜り、講師の先生方のご協力を得て第29回「女性の健康と働き方フォーラム」を開催できますことを大変うれしく思います。 また、女性の健康経営Rアワードの栄えある表彰を受けられた皆様におかれましては、それぞれのお立場における女性活躍支援のご活動に対し心から敬意を表しますとともに、お祝いを申し上げます。誠におめでとうございます。


コロナ禍の影響でなかなか人が集まることができない年月が続き、早三年の年月が過ぎました。リモートやズームで便利になったとは申せ、生の声や表情、状況に直接触れることができない年月には、不安を持った方々も多くあったことと推察致します。


私個人と致しますと、精密検査のおりにそれまで経過観察であった部分に初期0ステージの乳がんが見つかり、昨年11月に手術を受けました。今年に入り、ガイドラインに則って25回の放射線治療を済ませたところでございます。 医学は日進月歩であり、解明されていないことも多くあると伺ってはおりましたが、今回の体験は想像以上でございました。部分切除でもありましたので抜糸もなく,溶ける糸と傷の部分は糊のようなもので覆われてイメージとは違うものでした。隠れリンパも切除しましたが糸もなく糊付けでありました。


放射線治療のための25回の通院はなかなか難儀ではありました。放射線照射後の、体の内側から焼けるような痛みは言葉で説明できないほどに鋭敏でしたが、それでも多くの方々のことを思うと私は恵まれていたと思います。治療を終えた後は痒みと痛み赤みに驚きましたが存じ上げている皮膚科の先生が対処して下さいました。このように各科の先生方、看護師さん、技師さんにお世話になり、快方に向かっております。


告知から治療に至るまでには、女性の健康とメノポーズ協会での活動の中で学ばせて頂いたことが脳裏を駆け巡り、更年期医療でお世話になった先生方のお顔が浮かぶことが幾度もありました。自己管理の大切さを学んでいて良かったと思いましたし、今回の手術体験を通して科学的な知識を持つことの大切さと、各科を越えて総合的に患者を診る医療体制の必要性を実感いたしました。 公務の折に各分野の職場で悩む人達にも触れて多くの学びがございましたのも、根幹に女性の健康とメノポーズ協会で教えを頂きましたことのお陰と存じます。 皆様のご発展とご健勝を心から願っております。


メッセージ

若槻明彦 先生

愛知医科大学産婦人科学講座 教授
一般社団法人日本女性医学学会理事長


女性の社会進出が進み、労働力人口に占める女性の割合が4割を超えるまでに達しており、働く女性が増加しています。一方、労働に影響する様々な女性特有の疾患がありますが、社会におけるその理解度はまだ十分とは言えません。平成31年の経済産業省の調査によれば、企業における「健康経営の取り組みで関心の高いものは」との質問に対して「女性特有の健康問題対策」の回答が半数以上で最も多い結果でした。これは働く女性の健康課題に対する積極的な取り組みがこれまで十分ではなかったためと考えられます。また、女性従業員が抱える健康課題として多かったのが、月経困難症や月経前症候群などの月経随伴症状と更年期障害です。月経随伴症状と更年期障害による1年間の経済的損失は各々、7000億円弱と4000億円超と試算されており、これらの疾患が原因で昇進を諦めたり、離職する女性も少なくはありません。現在、この状況下における女性の健康課題への対応が急務です。


今回の第29回「女性の健康と働き方フォーラム」の講演では、更年期における問題点や月経前症候群、さらにはレジリエンスについても解説予定になっており、現在の女性の健康課題と合致した適切な内容だと思います。 女性はエストロゲンという女性ホルモンが各年代の疾患群と密接に関係していることがわかっており、月経困難症や月経前症候群は低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬で、更年期障害はホルモン補充療法などいずれもホルモン治療で症状がかなり軽減することもわかっています。 今回のフォーラムの目的は、「女性特有の健康課題を知って、仕事と生活の推進力アップ」とあります。このフォーラムを契機に、女性の健康課題に対する認知度が上がり、適切な対応がなされることで、女性のQOLが向上することを期待します。


メッセージ

田邉和孝 様

厚生労働省健康局健康課女性の健康推進室長


女性の健康とメノポーズ協会の皆様方におかれましては、長年にわたり、生涯を通じた女性の健康づくりとより良い働き方を推進するために、電話相談や意識調査等の様々な活動を積極的に展開してこられました。第一線の多大なる御尽力に対して、心より敬意を表し ますとともに、深く感謝を申し上げます。


女性の皆様が子育てや働き盛りの期間を含め、生涯を通じて健康で充実した毎日を過ごしていただけるよう、女性の健康を生涯にわたって包括的に支援することは、重要な課題であると考えております。 女性ホルモンの状況がライフステージごとに大きく変化するという特性等を踏まえつつ、女性が人生の各段階で抱えていらっしゃる健康課題を把握し、的確な支援につなげていくことが重要であるとともに、女性の就業人口の増加等の社会状況の変化にも対応する必要があります。


こうした女性の健康の包括的支援に関する課題を解決するため、平成27 年度に厚生労働省では女性の健康推進室を設置しました。女性特有の要素に着目した研究事業の成果の一つとして、女性の健康に関する情報発信を目的としたホームページ「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」を作成しました。多くの女性が直面する健康課題等について情報提供を行っています。スマートフォン等でも閲覧できますので、「ヘルスケアラボ」と検索いただき、参考にしていただければ幸いです。 また、厚生労働省では、毎年3月1日~8日までを「女性の健康週間」と定め、女性の健康づくりを国民運動として展開しております。今後も、女性の健康とメノポーズ協会をはじめ、女性の健康に取り組む各団体様とも連携し、女性の健康増進の取組を進めてまいります。


最後に、本日のフォーラムがお集まりの皆様に有意義で実り多きものとなりますよう祈念致しますとともに、女性の健康とメノポーズ協会の益々の御発展をお祈り申し上げ、私からの挨拶に代えさせていただきます。


開催にあたって

三羽 良枝

公益社団法人女性の健康とメノポーズ協会
理事長


皆様には、女性の健康週間 女性の健康とメノポーズ協会「第29回 女性の健康と働き方フォーラム」(後援:厚生労働省、(一社)日本女性医学学会、(公社)日本産科婦人科学会、(公社)日本産婦人科医会、(特非)更年期と加齢のヘルスケア、(一社)メディカル・プラットフォーム・エイジア)をご視聴いただき誠にありがとうございます。


当協会は、女性が生涯を通して健康で充実した働き方を実現できる、多様性の豊かな社会づくりを目指す活動を1996年より続けております。 いま日本女性の就業者数は2012年から2021年までの9年間で約340万人が増加(総務省労働力調査)し、2016年に女性活躍推進法が、2019年には働き方改革推進法が施行されるなど女性活躍促進の取り組みが官民で進められています。 しかし一方で男女間賃金格差や女性の高い非正規雇用率、併せて女性管理職割合の低さや勤務継続年数の男女格差などが問題となっておりOECDからも指摘されている状況でもあります。中でも日本の女性管理職や勤務継続年数が低い背景には、女性特有の健康課題による要素が大きく関わっていると当協会では推察しています。 厚生労働省、経済産業省の各調査からも、女性特有の症状がもたらす労働損失額の試算や働く女性の不安定な雇用形態などの実情が示され、「我が国の全就業者数の半数弱を占める女性の健康問題に取り組むことが企業業績の活性化や生産性の向上につながるのでは」との示唆も報告されています。


当協会では、1998年より開催する「女性の健康電話相談」、2000年より実施の働く女性対象の健康意識調査、2021年に実施のNHKとの共同企画「更年期と仕事に関する調査」等からも「職場に女性特有の健康問題の相談窓口はなく、話せる雰囲気もない、上司や職場の無理解と症状の悪化で離職した, 降格を申し出た」などの職場環境の未整備の実情が把握されています。また「症状改善の対策を知らなかった:6割」の結果もみられ、改善のためにはまず科学的根拠に基づく適切な知識と理解が何より不可欠と考え、周知の社会的底上げに役立ちたいと2012年より「女性の健康検定R」を開始しました。 女性が主体的に自分に適した働き方と健康づくりを図り活動することが、今後の日本の活躍の原動力となり、また国連が掲げるSDGsにも関わる女性も男性も働きやすい持続可能な社会の実現につながると考え、当協会は今後も「女性の健康支援」「女性の健康教育」「女性の健康経営R」の当活動を続けてまいります。どうぞご理解ご支援を頂きますようお願い申し上げます。


本フォーラムでは、世代毎に異なる女性特有の健康課題の中より、月経前症候群や更年期症状 と仕事、心の回復力とメンタルに関する各分野の専門の先生方にご講演をいただきます。 ご視聴頂く皆様の日々にお役立ていただきご参考になさって頂けることと存じます。 また、女性の健康経営Rアワード表彰のプログラムでは、本年度の個人、企業・法人・団体対象の受賞者発表と受賞された方々の活動報告とメッセージをお届けいたします。栄えある表彰を受けられた皆様におかれましては、それぞれのお立場における女性活躍支援のご活動に対し心から敬意を表しますとともに、お祝いを申し上げます。誠におめでとうございます。


最後に、本フォーラム開催にあたり、当協会名誉総裁・寬仁親王妃信子殿下よりお言葉を賜り、また、一般社団法人日本女性医学学会理事長・若槻明彦先生、厚生労働省健康局健康課女性の健康進室室長・田邉和孝様よりメッセージを賜りまして、誠にありがとうございます。お心のこもった貴重なお言葉とメッセージをお寄せ頂きましたこと、改めて心より御礼を申し上げます。


第29回 女性の健康と働き方公開フォーラム 第29回 女性の健康と働き方公開フォーラム